タイ国でのタイマッサージの国家資格は2年ほど前にできたそうだ。

これまで国家資格がなかったことが不思議だが、1980年代のNPOによるタイマッサージ復興プロジェクト以前はタイマッサージが現代医療の陰に隠れて特定の学校、特定の教師により地域に密着した形で伝えられてきたことがその原因だ。

国家資格がなくても、タイマッサージ復興プロジェクトの活動を引き継いだタイ厚生省伝統医療開発局によりタイ人向けのタイマッサージ習得セミナーが開催され、修了証が発行されてきたし、ワットポーを始めとした多くの学校も順調に活動していたので、特に問題はなかった。

しかし、タイ政府は近年、タイマッサージを中心とした伝統医療を中国漢方のような世界的な一大産業にしようという構想を持っており、文部省、労働省、厚生省が連携しながらその構想を少しずつ形にしてきた。そして、諸外国で専門家としての就労ビザを取得するためには、それなりの資格を提示する必要があり、そのために国家資格をちゃんと作ったということだ。

システムは、タイ文部省認定校の、タイ厚生省認定教師(数十人いるらしい)が、それぞれ定員20名の生徒を2年間かけて育成し、所定のレポート、テストを経て合格認定を行うというものだ。

このシステムだと人気のある先生に生徒が集まることになるはずだが、ピシット先生は既に定員の20名の生徒を抱えているとのこと。先日もレポート提出のために何人かの生徒が来ていた。カリキュラムはタイマッサージ実技だけでなく、解剖学や伝統医療の薬草の知識、現代医学的な知識など、座学の時間も多いようだ。だから習っている人は、一定以上の学歴がある、知的な人が多い。

ところが、2年前にスタートしたのに、テキストはまだ完成しておらず、現在テキスト作成中なのだという。特にストレッチについてはピシット先生が第一人者とのことで、多くのピシットスタイル・ストレッチテクニックも今回のテキストには掲載される予定だという。

そろそろ、第一期生の卒業が始まるはずだ。あるいは他の先生のところから既に卒業生が出ているかもしれない。

日本は、専門能力を客観的に評価する指標がないことを理由にタイマッサージ従事者の入国・就労を頑なに拒んできたが、近い将来、国家資格を持つ人については入国を認めるということが現実味を帯びてきたと思う