バンコクにあるワットポー・タイトラディショナル・マッサージスクール。ここに、日本人教師がいるのをご存知だろうか。
宮原由佳さん。ワットポー初の外国人教師である。
ワットポーに限らず、タイのマッサージスクールは外国人を本格的に育成することに慎重である。タイ政府の方針で知的財産の国外流出を恐れているからだ。そんな状況で、宮原さんはワットポーの教師となった。そこに至るまでにはもちろん、筆舌に尽くしがたい苦労があった。
私もお会いしたことがあるワットポー・スクールの理事長、そして現在、経営を取り仕切る理事長のご子息のセラート氏。お二人とも気さくで聡明、素晴らしい方だが、その二人から宮原さんは絶対的な信頼を得ている。
それは宮原さんに会えばわかる。私利私欲のない、大変素晴らしい人柄の方だ。もともとは日本で教師をやっていたのだが、旅行でタイを訪れたときに、タイマッサージと出会い、基礎コースを終えて帰るつもりが何か運命的なものを感じて、これは徹底的にやらねばならないと思ったそうである。そして、長期滞在を決心し、理事長に頼み込み、ワットポーでマッサージ師を勤めながら技術を何年もかけて磨いてきた。マッサージ師の収入は日本人の感覚からすれば大変低い。そんな状況で、異国の地で、一生懸命、タイマッサージを学んできたのだ。その姿を見れば、理事長もセラートさんも認めざるを得ない。こうして、外国人として初のワットポーの常任教師となったのが宮原さんである。
タイ語はもちろんペラペラ。マッサージの技術は天下一品である。ワットポーで事前に宮原さんを予約すれば誰でも通常料金でやってもらえる。それで私も何度かお願いしたのだが、タイの先生以上にすさまじいレベルである。まず指が違う。外見は美しい華奢で色白な女性なのだが、指が体に触れた瞬間からこれは違うと思い知らされる。非常に力強く、そして静かに体に入ってくる指だ。それに、日本人の細やかさが加わるので、もう何も言うことはない。天国にいる気分を味わえる。
先生としても、多くの方に施術してきたので何かをつかんだという事だ。日本語でその奥義を解説してもらえるのでワットポーで習うなら是非とも宮原さんを先生に指名すべきである。もし、スケジュール的に難しければ施術だけでも受けなければ損だ。あれだけの技術が、あんな料金で受けられるというのは信じがたいことだと断言できる。