そもそも、按摩マッサージ指圧という手技がなぜ国家資格になったのか。国家資格になったのは昭和22年のことである。それ以前にも多くの手技療法があった。カイロもあったし、ヨーロッパ、中国、インドなどから伝わったマッサージやアーユルベーダ、漢方の按摩もあった。多くの手技療法が乱立し、中には事故を起こすものもあったという時代背景に国民の健康を守るため、国民を詐欺から守るため、国家資格化して管理しようというのは自然な流れだったと思われる。

このような雰囲気の中でルーツが日本で、安全性も問題がないレベルで、内容も優れている(と考えられた)手技を中心に体系化がなされ資格化がなされたのだが、そこで置いていかれたのが他の手技療法の人々である。後から自分たちの手技も資格化しようと頑張っても、ダブルスタンダードとなる類似資格を認めるわけにもいかず今日に至ったわけである。視覚障害者の就労保護という位置づけもされたため、無資格者に対して過激な発言をするものも少なくない。

しかしながら、職業選択の自由という憲法レベルの原則があり、多くの人がリラクゼーションを楽しみ、市場規模が大きな産業として社会的にも認知されている現在、資格についてあれこれ議論すること自体がナンセンスになっている。

失業者が問題になっている今、雇用を生み出している産業はとにかく政府にとってありがたい存在である。この業界は、無資格ゆえに安全には有資格者以上に気を使い、健全な営業を行ってきた。今後も、各流派が切磋琢磨し、互いに学びあい、技術を高め、多くの人を幸せにする産業として育っていくことが、顧客、政府、事業者すべてにとって望ましいことだと思う。