実は、当スクールで教えているタイマッサージは毎年変化している。
「前に教えてもらったことと違う」ということがよくある。

変化する理由は、ピシット先生自身が手技を変えるからである。技術のキャッチアップを行うため毎年2回、バンコクを訪問することにしているが、行く度にピシット先生が教えることが微妙に、時に大きく変わっている。副教師のパーニー先生とピシット先生が教えることが違うことも多々ある。パーニー先生がやり方が変わったことを聞いていないからそういうことが起こる。

行く時期によって言うことが違う、先生によって教えることが違う。学校として教えていることがぶれている、いい加減、と取られがちがだそれは違う。ピシット先生が現在も手技を改良、修正し続けているのがその理由だ。

そもそも、タイマッサージはルーツもたくさんあり、先生によって言うことも違う。タイマッサージは単一ではなく、50年ほど前までは王宮、寺院系、そして田舎のタイマッサージと多くの流派が乱立していた。

この30年ほど、それらを現代医学的な視点で見直し、再構築し、国家資格化をしようという取り組みが行われてきた。そのプロジェクトにピシット先生は深く関わっている。

それが、どういうものかというと、たった一つの指圧ポイントがどこかについて大学教授、医者、複数のタイマッサージマスターが丸一日議論をすることもあるらしい。医学的知見、そして、押したときのセンへの響き、治療効果、古い文献、そういうものを多角的に見直して、正確な知識を積み上げていくという気も遠くなるような作業を行っている。その結果、より精度が高くなる方向に手技は変化する。ピシット先生が他の先生の手技を変化させることもあるし、ピシット先生もいいと思ったことはどんどん取り入れる。

2年前の国家資格化により、一段落したその会合だが、現在も行われている。医学も、伝統医療も日々新しい発見があり、進化は止まることはない。これで終わり、完成ということはない。

チェンマイ等の田舎のマッサージマスター、そして一般的な多くのタイマッサージスクールは、学者や他のマッサージマスターと交流せず、何年も同じやり方を続けているケースがほとんどである。

医療や技術というのは本来、日々進化して当然のものだ。
教えてきたやり方を捨て、新しいやり方を取り入れるのは勇気の要ることだ。生徒の前で、過去の自分を否定することになるから。
ピシット先生は、現在既にタイマッサージの第一人者として名声を確立しているにも関わらず、自分の手技を客観視し、他の先生の意見についても正しいと思ったことは素直に取り入れ、日々技術を進化させているところが凄い。
ピシットスタイルが他のスタイルより素晴らしい理由の一つはこういうところにあるし、だからこそ、ピシット先生がタイマッサージの第一人者であり続けるのだろう。

「完成したと思った瞬間から後退が始まる」というのは私の持論だが、私も常に勉強を怠らず、自分のやり方を日々見直さなければいけないと思う

下の写真は、王宮近くで売っているシワカ・コモラパ像