ときどき、「そちらでタイ政府認定の資格は取れますか?」というお問い合わせをいただく。
最近、「タイ政府認定資格が取得できます」とうたっているスクールが多くなってきたのが理由だと思われるが、実際のところ、タイ政府認定資格というのは数年にわたるカリキュラムを修了し、難しい試験に合格しないと取ることはできない。しかも、タイ国籍を持つタイ人でなければ取れない。タイ政府認定の資格には二種類ある。タイ伝統医療ドクターと、タイマッサージ国家資格である。タイ伝統医療ドクターについては私の先生の一人であるチェンマイのワンディ先生も取得しているし、ワットポーの何人かの先生も取得しているのでタイマッサージスクールの先生の中では比較的メジャーな資格である。国家資格の方はさらに敷居が高く、お金も学歴もある、医者を目指すような人しか取っていないような気がする。ちなみにピシット先生は資格を与える側の人であった。
ではタイ政府認定資格を宣伝文句にしているスクールは嘘をついているのかというと、そうとも言えない。まずはタイ文部省およびタイ厚生省が認定した「ちゃんとした」学校のカリキュラムを修了した、という修了証=ディプロマの意味はある。また、「タイ政府認定資格」ということについては、その意味をちゃんと説明すると、「タイ文部省が営業許可を与えたタイマッサージスクールの一つである○○○で、上級コースを受けるための資格」である。日本で基礎コースを受講した後に、タイの本校で上級コースを受けるためには必要な資格であるから、資格と言えないことはないが、資格自体がタイ政府認定なのではなく、その資格が意味を持つスクールの母体がタイ政府の認定を受けているいうことなので誤解のないようにしたい。そしてその資格はタイ政府認定校で共通に効力を持つわけではなく、例えばITMの場合は、ITM系列のスクールでしか意味を持たないが、将来にわたりそのスクールでキャリアを伸ばしていきたいのであれば「資格」にこだわるのも一理ある。(一時期、タイ人がタイでタイマッサージの仕事をするためには文部省認定校の修了証が必須になる、という噂があったが、今日現在、そのようなことは行われていないようだ)
まあ、そういう一定の意味はあるが、タイで「私は日本でタイ政府認定資格を一週間で取った」などと言うと笑われるし、日本のサロンの就職面談で「タイ政府認定証」を見せても何の効力もないことは知っておいた方がいいだろう。
余談になるが、バンコクのピシットタイマッサージスクール本校には立派なプロジェクタとスクリーンがあるが使っているのを一度も見たことがない。「なぜプロジェクタを買ったのですか?」と聞いたところ「タイ文部省の認可を得るためには必要だったからだ」という答えであった。タイでスクールを開業するためにはタイ伝統医療ドクターが在籍しているとか、プロジェクタを保有しているとか、いくつかの要件が必要なのだ。逆に言えば、そういう要件を満たしていれば「タイ文部省認定」が取れるという仕組みなので、「タイ文部省認定」だからといって、教えている先生が優れているとかカリキュラムや受講環境が優れている、とは限らないことも知っておいた方がいいかもしれない。