日本には按摩マッサージ指圧という国家資格がある。3年間、多額の費用をかけて専門学校に通って初めて取得できる資格だ。

では、按摩マッサージ指圧の国家資格なしに「マッサージ」の看板を掲げて営業することは無資格営業という犯罪になるか?

なるケースとならないケースがある。なるケースには二種類あり、ひとつは、顧客に対して按摩マッサージ指圧の有資格者であると誤認させている場合、もう一つは治療効果をうたう場合である。治療効果というのがまた微妙で、「体が軽くなります」とか「肩こりの方にお勧め」ぐらいならセーフ、「腰痛を治します」「肩こりを治療します」ならアウトという感じか。

ここで重要なのは、「マッサージ」という言葉を使っているかどうかを見られるのではなく、実情や顧客からの訴えが判断の元になるという点である。私も厚生労働省や保健所に確認したことがあるが、「タイマッサージ」という言葉を使うことは特に問題ではない。リフレクソロジーやクイックマッサージ、そしてスパのようなリラクゼーション施設は多くの方のニーズがあり、取り締まることは国民の利益にならない。多種多様なマッサージが市民権を得ている現在、単に言葉だけの取り締まりは何の意味もないという話である。「タイマッサージ」だと逮捕されそうなので「ヌアボーラン」の看板で営業しようというのは必要のない心配なのだ。

あまり知られていないことだが、カイロプラクティスや整体といった如何にも資格があるような、如何にも医療行為のような業態は、国家資格とは何の関係もない。タイマッサージやクイックマッサージを取り締まるなら、(ほとんど治療行為を行っている)こちらも取り締まる必要が出てくる。しかし、それをしないのは、その商売も多くの方を幸せにし、喜んで利用されているからであり、深刻な問題も発生していないからであり、何より、雇用を生み出し、税収に繋がる一つの産業だからである。取り締まることで発生するマイナス要素のほうがプラス要素より遥かに大きい。

では、そもそも按摩マッサージ指圧という国家資格は何なのか? それだけが国家資格にふさわしい歴史と効果と安全性を持っている手技療法なのか?
実はそうとも限らないのが、この曖昧な現状を黙認せざるを得ないところでもあるのだ。次回はその辺りについて言及する。