テレビで連日、事業仕分けの模様が放送されている。それを見て、無駄な事業を廃止させる仕分け人はすごいという印象を持っている人も多いかと思う。

しかし、それは間違いだ。なぜかと言うと、事業や提案を否定するのは簡単だからだ。未来のことは誰もわからない。わからないから証拠がない。提案の欠点を探し、うまくいく証拠がないからだめだというロジックは誰にでもわかりやすい。

確かに、無駄な出費を抑えることは大事だろう。しかし、問題なのは、では未来のためにどういう事業をするべきか、それを提案すること、そしてそれを勇気を持って採用することだ。

否定することに対し、提案することは実に難しい。比類なき創造力と計画力、そして実行力がなければできない。しかも、否定派と戦いながら突き進む折衝力、粘り強さも必要だ。結果的にうまく行かない可能性も高い。その場合は全責任を取って切腹(辞任)しなければならない。一生懸命頑張ってきたのに世間から冷たい目で見られることになるリスクが極めて高い。通常の感覚ならそんなことは馬鹿馬鹿しいと思って当然だ。

以前勤めていた、日本を代表する大企業で面白いことが言われていた。

「何もしない人が出世する」

なぜなら、何かをしたら失敗する可能性もある(その可能性のほうが高い)。だから、何もしないで、人が立ち上げたプロジェクトを否定しまくる。そのプロジェクトがうまく行かなければ、「私はだめだと思っていた」と言う。うまく行けば、「私がアドバイスしたからうまくいった」と言う。どちらにしても、手柄のようになる。そういう人が出世するというのだ。それは、事実だった。

会社経営でも、政策でも、何を止めるかということより、何をするかということの方がずっと重要である。ずいぶん前に、テレビで、何でも節約して一ヶ月の生活費を極限まで切り詰める家族が素晴らしいことのように放送していたが、私はそれを見て、節約する時間があったら自分の能力(給料)を高める勉強をしたり、金になる仕事をした方がずっと生活が豊かになるのに、と思った。

政府も、けちけちするのはこのくらいにして、日本が世界に先駆けて経済復興を遂げるような、勇気ある挑戦を打ち出してほしいものである。でないと、本当に日本経済はどんどん縮小して、どうでもいい国の一つになってしまうような気がする