教えるということは難しい。どういう教え方をすれば効率よく、確実に学んでもらえるのか、いつも考えているが一人で考えていても仕方がないので時々他のスクールを見に行くことにしている。時間が許せば、実際に受講して、生徒さんの気持ちになってみることにしている。
この前行ってみたのは、チェンマイのCCA(チェンマイクラシックアート)。2回目の訪問だが色々と思うことがあった。今回は、「スクールで何を学ぶのか、どう学ぶのか」ということを何回かに分けて考えてみたい。

タイマッサージスクールのカリキュラムは大きく分けると実技と座学になる。タイのスクールでは言葉の問題もあり、座学については実技の合間に簡単に説明するだけか、書物やネットでの自習するシステムにしているところが多い。タイマッサージの歴史やマナー、心がけのようなことは読めばわかる。CCAのWEBサイトに掲載されていることで十分だろう。解剖学についてはいい本を買って、自分でゆっくり勉強すべきである。凝りやトリガーポイントについてある程度理解すると、タイマッサージで自分がしていることが何なのかイメージが湧き、技術の向上を考えるときの基準ができる。

問題は実技である。マッサージを全くやったことがない人は、マッサージというのは「どこを」「どうやって」施術すればいいのか学べば大丈夫だろうと考える。具体的なイメージとしては、ポイントを指圧する、筋肉をストレッチするということを一つ一つ覚えて、順番にやればいいのだろうと考える。
それはそうなのだが、なぜか、人によって施術の気持ちよさは劇的に異なる。同じことをやっているはずなのに、気持ちいい人、不快な人が明らかに存在する。いや、初めてのころは恐らくそれすらわからない。痛かろうが、気持ち悪かろうが、タイマッサージとはこういうものかと思い、いい、悪いの判断もできないと思う。

私の言っていることがわかってもらえるだろうか? 気持ちがいいことくらい猿でもわかる、と思われるかもしれない。しかし、実際にはそうではないと思う。タイマッサージは音楽に例えることができるが、子供のころ、ショパンやベートーベンのようなクラシック音楽を聴いて、あるいは、マイルス デービスのようなジャズを聴いて感動できただろうか? 同じベートーベンでもカルロス クライバーが指揮をすると別の音楽のように素晴らしいということが理解できただろうか? 少なくとも私にはわからなかった。タイマッサージもそういうところがある。まず、どういうマッサージがいいのか自分でわからないと技術の向上のしようがない。そこにまず個人差が存在し、感性の鋭い人=センスのいい人は、理解力も早いが、そうでなくても、日常的にタイマッサージに接していると感性は磨かれる。音楽(聴覚)もマッサージ(触覚)も、繰り返し経験することで脳内のニューロン、シナプスが成長し、体がその良さを覚えるようになる。体への触覚刺激は最初はくすぐったかったり、痛かったりしたことが経験を重ねることで快感へ変わる、いわゆる体が開発される。

タイマッサージを学ぶ第一歩は、この、自分のマッサージに対する感性を磨くということから始まる。色々な人からマッサージを受けること、名人と言われる人にやってもらうこと、スクールで生徒同士で練習すること、先生にやってもらうこと、何でもいいが、繰り返し受けることで体が開発され、自分にとって気持ちがいいマッサージはこういう感覚だどいうことが確信を持ってイメージできるようになる