タイマッサージの施術は1~2時間、連続して行うので、それができるようになるには、一つ一つの手技とその順番を覚えればいい。別の言い方をすれば、施術は連続しているが、個々の手技に分解することができる。順番を覚えるのは単純に暗記物なので、ひとつひとつの手技をきっちりできることを学ぶのが実技のレッスンである。細かいことを言えば、手技と手技を滑らかに繋ぐということもテクニックの一つだが、それも手技の一部分と言えるだろう。

チェンマイクラシックアートのレベル3、レベル4では、ものすごい数の手技を一日8時間、3日間に渡って習得するのだが、その中には、ピシェット師が教えている手技が多数含まれる。びっくりすることは、ピシェット道場で一日かけて学ぶことが、ほんの数分のデモンストレーションと、一回だけの練習で終わってしまうことである。CCAではピシェット師が数か月かけて教えることを3日間で終えてしまうのである。私は先にピシェット道場に行き、後でCCAに行ったので、CCAで驚いたが、CCAで習った人がピシェット道場に行くと、レッスンの進行の余りの遅さに逆に驚くだろう。そして、自分がCCAで習得したつもりになっていた手技をピシェット道場でやって、100%のダメ出しをくらい、衝撃を受けるに違いない。何がだめなのか、どうすればいいのかはピシェット道場に行けばわかる。実は、手技の一つ一つはそれ程に奥深いのである。

これはCCAが悪いわけではない。ほとんどすべての外国人向けのタイマッサージスクールで言えることなのだが、短期滞在の受講生のために、決められた時間、料金で一気に教えなければならないからこうなる。一つ一つの手技を、すべての受講生ができるまでやっていたら授業が終わらないのである。そんなレッスンをしていたら低価格なグループレッスンを決まった日数で開催することなどできないし、短期間で一気に一通り習ってしまいたい人(がほとんどなのだが)にとってはありがたいシステムだ。

ピシェット師はこのようなスクールのあり方に疑問を持ち、現在のようなピシェット道場を設立した。そして、そのようなスクールのあり方に賛同する人たち、あるいは、今まで習ってきたつもりだったが本質的なことを全く習得していなかったことに衝撃を受けた人たちが多数、ピシェット道場に通っている。その意味で、ピシェット道場は外国人が長期間かけて技術を磨くことができる希少なスクールであると言えるのだが、あまりにも日数がかかること、そして、宗教色が強すぎるため、万人に薦められるスクールではない(信者になるかどうかは本人次第だが、数か月~数年の滞在のために、日本での人生を一旦捨てて社会からドロップアウトし、マッサージどころか人生自体を0からやり直すことになってしまいやすい)ことが残念だ。ただ、ピシェット式をすべて習得することはできないが、数日間だけでも通うことで、通常のスクールでは習っていなかった大事なことがあったのだという気付きにはなると思う。

次回は、ではピシェット道場では何をそんなに時間をかけて習得しているのかを説明してみたいと思う