私の先生の一人であるワンディに、チェンマイで一番お勧めの先生は誰か聞いてみた。答えは、

「私が一番だ」

・・・。

わかった、では二番は誰か?

シンチャイだと言う。全盲でありながら、病院でもタイマッサージを教えていたという。そばにいたヨーロッパ人の男性も、「シンチャイはすごい、素晴らしいマッサージをする。ものすごく気持ちいいのに痛くない。施術は指圧、肘圧を中心としており、ストレッチは少ない」と大絶賛していた。

実はシンチャイという名前はワンディ以外からも複数の人物から聞いていて、どうやら現在チェンマイで、欧米人に大評判らしい。欧米人は、日本人に人気のチェンマイクラシックアートや、TTCスパスクール、CLSのようなちゃんとした(形式の整った)学校より、アジア的な無秩序な混沌とした神秘的な先生を好むようで、(線香臭い)ピシェット師詣でをするケースが多かったが、トレンドがシンチャイ先生に移ってきているような感じだ。

確かに、全盲のマッサージ師がすごい施術をするというのは神秘的で興味深い。聞けば、2時間400Bで施術してくれると言う(タイを代表するマスターの一人が僅か1100円で二時間もしてくれるのは信じられない)。ただし予約が多いので数日待たされる可能性はあるらしい。

歩いていける距離なのでとりあえず行ってみた。すると、そこにシンチャイ先生がいて、「明日は予約でいっぱいだが、明日バンコクに帰ってしまうのなら何とか時間をつくりましょう」と言ってくれた。初対面にもかかわらず、私のためになんとか時間ができないか一生懸命考えている様子が伝わってきて、この人は途方もない人かもしれないと直感した。ピシェット師のような(彼もきさくないい人だが)取り巻きに崇められた師匠肌の人かと勝手に思っていたが、全くそうではなく、その評判を知らないものならば単なる気の毒な身障者というような哀愁がただよっている。しかし、なんと言うか、人に同情を求めるような空気は全くなく、周囲の人に対して気配り、愛情を発散している、そして、自然に人を指導する立場として振舞っている。周囲の人は、先生、先生と明らかに尊敬の気持ちを持って接している。

大げさに言えば、キリストのような人だ・・・

彼の心の世界、彼がこれまで歩んできた道に思いを馳せながら、明日の時間を待つことになった。いったいどんな体験が待っているのか・・・

(続く)

シンチャイ・タイマッサージの外観