タイマッサージを長く続けたときに壊れるのはどこか?

まずは、腰。ヨガで言う猫のポーズ(両膝、両手をつき、指圧または手掌圧を相手に加える)がタイマッサージの基本姿勢である。このときに背中が丸くなっていたり、頭を垂れ下げていると、頭部の重みが腰に伝わり、背筋は釣竿のように重みを引っ張り上げなければならない。筋肉というのは負担をかけた状態を長く続けると損傷する。動かしながら負担をかけている分にはいいのだが、静止した状態で負担をかける「等尺性伸縮」が長時間に及ぶのが一番良くない。正しい姿勢で行ったとしても腰への負担は0にはならず、結果として腰痛やヘルニアを引き起こすことがある。

次に肩。猫のポーズで指圧または手掌圧を行う場合に、肩に力が入っているとひどい肩こりの原因になる。肩の力で圧を加えるのは間違いで、肩は脱力して、自分の体重を預けるというのが正しい圧の加え方だが、強い圧をかけなければいけないという意識を持ってしまうとついつい肩に力が入ってしまうものである。

そして指。腰などの特定の指圧ポイントはかなり強く指圧する必要があるし、そこだけでなく、指圧は全身に施さなければいけないので指の関節には大きな負担がかかる。損傷すると痛くて施術どころではない。これを防ぐためにタイの、特に王宮系のタイマッサージ師は指立て伏せのような運動を行い、親指の根元の筋肉を鍛え、指自体を太くするほどだ。

最後に膝。タイマッサージは膝をついて行う姿勢が多いので、マットの厚みが足りなかったり、マットが硬かったりすると、膝を損傷してしまう。

タイマッサージを行うことで壊すのはだいたいこんなところだが、実はそれだけではない。スポーツのように筋肉を色々な方向に動かずに、じっとした姿勢で筋肉に負担をかけていると、負担がかかっている筋肉のトリガーポイントが他の筋肉にも連鎖し、体のあちこちにトリガーポイント(ブロックとも言う)が生成されてしまう。トリガーポイントはその場所だけでなく離れた場所にも痛みを生み出し、痛みが更に悪い姿勢を誘発し、体がどんどん悪くなる悪循環に入ってしまう。体が痛いだけならまだいいが、ヘルニアや関節炎、脳梗塞等々、手術が必要になるような重大な病気の温床となる場合もある。