グレイトフル・デッド (The Grateful Dead) というバンドがいた。
1968-1995にかけてアメリカで圧倒的な観客動員数を誇ったアメリカを代表するライブバンドである。

スタジオレコーディングはいまいちなのだが、ライブでの即興演奏、そしてその音質は非常にクオリティが高く、唯一無二のトリップミュージックとして熱狂的なファンが多い。私もその一人である。

このバンドのキーボードプレイヤーは(死亡により)何度か交代しているが、1979年に加入したブレント・ミドランドが張り切って、「今日はPlaying in the bandからやろうじゃないか!」と提案すると、メンバーは「いや、だめだ。それは最初にやるものではない」と反対する。別のときにも何かと提案を却下される。ミドランドは自由奔放に見えたデッドの演奏やセットリスト(ライブで演奏する曲目)が細部にわたって動かしがたい順番や暗黙のルールに支配されていることに非常に驚いたと話していた。

この話を聞いて、タイマッサージと似ているなと思った。ある人に90分のマッサージをすることになった。その人の状態や好み、そして自分の気分で90分間に何をしようかと考える。創造性を発揮する楽しい時間だ。施術の間、あるところは重点的にやったりするが、タイマッサージとしての型、はすぜないこと、順番は厳然として存在しているような気がする。タイマッサージとライブはそういう意味で非常に似ている。単に言われた施術をするのではなく、一対一で自由な演奏を繰り広げると考えると楽しい。だから、店のオーナーはセラピストに自由を与えなければならない。60分ならこれをやるとか細かく決めてしまうと施術が楽しくなくなる。セラピストが楽しくなければされる方も気持ちよくないに違いない。

グレイトフルデッドはライブ音源を無料で流通させていて、今日ではインターネットで高音質の演奏をいつでも聞くことができる。