タイに行けばタイマッサージを受けたくなるが、どこがお勧めかというのは難しい問題だ。スパのようなきれいな施設で受けても一時間1500円くらいだからある意味受けなければ損なのだが、自分が行くとしても考え込んでしまう。
その理由は、適当に入ったマッサージサロンでいいセラピストに出会う確率が極端に低いからである。昔はもっとレベルが高かったようにも思うのだが、最近はひどいマッサージが蔓延しているように思う。そう感じているのは私だけではないようで、チェンマイクラシックアートのオーナーの方も、スクールのページでこのように書いている。
以下引用——————
今、あの「世界で一番気持ちイイマッサージ」が滅びかけています。
最近、チェンマイ式タイマッサージ発祥の地チェンマイでも、あの「世界で一番気持ちイイマッサージ」に当たることが急速に少なくなってきました。
これには、当スクールもとても危機感を感じています。これはタイの国が観光収入目的で、タイマッサージの普及を奨励するあまり、短期間にマニアル的な1-2時間の施術の流れのみを覚えて、その施術しかできない画一的なマッサージ師を大量に排出してしまっている結果だと思います。
ここまで——————
そう、タイマッサージは「世界で一番気持ちいいマッサージ」だったはずなのだ。私がタイマッサージを始めたのも私自身がそう思ったからなのだ。ところが最近タイのサロンで行われるマッサージは、痛いのをずっと我慢している感じになる。一時間で300バーツくらいなので、失っても大した金額ではなく、本当はすぐに中止して帰りたいのだがセラピストは機嫌よくやっているので「へただから帰る」とは言い出せず結局最後まで我慢することになる。ささやかな抵抗としてチップは払いたくないのだが満面の笑みで見送られると結局払ってしまう。つまり、セラピストは自分は「世界で一番気持ちいいマッサージ」をやっているつもりなのであり、そこが救いようがない部分でもある。
マッサージチェアというものがある。ファミリーやパナソニックのようなメーカーが出している大型の高級機だが、最新のものがフィットネスクラブに置いてあるので何度か使ったことがある。マッサージチェアを自宅にも買って持っているような人は「最近のはすごく気持ちがいい」と言うし、フィットネスクラブでも皆さん気持ちよさそうにしている。これがわからない。あれのどこが気持ちいいのか? 背中をゴリゴリされて痛いだけだ。ふくらはぎとか腕はエアーで掴まれるような機能があるがそれも強すぎたり弱すぎたり、何をしているんですか? という感じだ。私にとってはマッサージチェアというのは拷問に近い。あの感じがタイで受けるへたなマッサージの感じだ。だから私や、タイマッサージをよく知っている人はそれがだめなことはわかるのだが、一般の人はひょっとしてあれでも気持ちがいいと思っているのかもしれない。マッサージチェアで気持ちがいいと思うのだから、それよりは少しましな、人がやるマッサージに十分満足しているのかもしれない。そしてそんな客が、セラピストを勘違いさせ、だめなタイマッサージが蔓延する理由の一つになっているのだと思う。
具体的に何がだめかというと、まず、握るように押すことだ。リズムはせわしなくて速く、そして、なぜか指圧を入れた後、圧を抜く直前に皮膚をえぐるような動きが入る。これが痛くて不快だ。もう一つは、ラインやトリガーポイントを的確に捉えていないこと。最初は「こういうツボやラインもあるんだ、この人はよく知っているなあ」などと思っていたのだが、そうではなく、単純に意味のないところを押しているだけのようだ。場所も違うし押しかたも変。これでは効くはずもないのだが、効かないだけに、相手が痛そうな顔をするまでやたらめったら強く押してくる。痛そうな顔をすると自分はちゃんとできていると思うのかセラピストは満足げな笑みを浮かべる。
ホテルの近くなどに店を構える小さいマッサージ屋さんは、ほぼこんな感じだ。もちろん、中にはちゃんとした人もいるが、確率的にそういう人に当たることは少ない。そういう人は常連さんに予約されているからほとんど当たらないのかもしれない。それで、「世界で一番気持ちいいマッサージ」を探してみることにした
“