ひょっとして私の感性がおかしいのではないだろうか? ありもしない、架空の理想のタイマッサージを追い求めているだけなのではないだろうか? 他のお客さんは皆気持ちよさそうにしているし、満足げに帰っていく。リピーターの人も多いようだ。そういえば、昔からタイマッサージはこんな感じだったのかもしれない・・・

そう思いかけることもあるが、私の師であるピシット先生のタイマッサージやシンチャイ先生を思い出すと、いや、そうではない、先生がああなのだから、あれが本当のタイマッサージだと思い直すことになる。

タイマッサージではなくフットマッサージをやってもられば当たり外れはほとんどない。習ってみればわかるが、誰がやっても同じ感じになるような技術で構成されている。難しくないのだ。一方、タイマッサージは姿勢やポジション取り、指圧の方法に個人差が出やすいので難しい。

そこで初心に戻り、チャオプラヤ川沿いの、ワットポーの中にある施術所に行ってみた。昔はマッサージを受けるのに入場料を払った記憶はないが、入口に案内されそこで100バーツの観光チケットを買って中に入った。後でわかったのだが、ワットポーマッサージスクール(チトワン通り)から別の寺を抜けてワットポーに入る裏口からだと(関係者用の出入り口?)お金を払わなくても入れる。しかしまあ100バーツなので賽銭だと思って払えばいいかと思う。
ワットポー境内の施術所は今やエアコンが効いた快適な空間である。大繁盛しているのでまだ人が少ない午前中がお勧めだ。午後になると待ち時間が一時間以上になると思う。ここで、とりあえず一時間420バーツのマッサージを受けたのだが、これが感動するくらい大当たりだった。求めているものはここにあった。足先に触れた最初の数タッチで、体の深部へ響いてくるような重量感。打ち寄せる波のような心地いいゆったりとしたリズム。これこそが世界で一番気持ちいいマッサージだ。すぐに施術時間を2時間に変更してもらいタイマッサージを堪能した。そのセラピストはワットポーの標準シーケンスだけでなくエルボーを使った施術やセンを弾く施術など技のバリエーションもあった。隣を見てもそういう技を使っているので、どこで習ったか聞いたら、ここで習っただけだという。今ではワットポーもエルボーテクニックなど色々な教育をしているのだろう。しかしながら、一押し一押しが確実にセンを捉え、思った通りの、期待通りの施術をしてくれるのは素晴らしい。結論としては、タイのお勧めサロンはワットポーの一択である。
余りにも良かったので、翌日また行って、同じセラピストを指名した。だんだん調子に乗ってきて、後半はかなり痛い感じになってしまったが、優秀なセラピストにありがちな現象である。嫌な痛さではなくトリガーポイントをしっかり解す痛さである。痛いのが好きな人にはたまらないが、痛いのが好きでない人は、痛くなくして(タムバオボオ、マイチェップ)と言って暴走を止めるのがいいだろう。自分好みに強さにチューニングしたら、後は至福の時間が待っている。

ただ、ワットポーに行った他の方は「私にとってはいまいちだった」と言っていたので当たりはずれはあるのだろう。ここまで読んでいただいた方には外れの経験をしてほしくないので、私が感動した当たりのセラピストの名前をこっそり教える。そのセラピストの名前はソンポーン(写真の人)、ワットポーを訪れる際は是非指名することをお勧めする