タイマッサージの流派の中にヤムカーンというものがある。火であぶった足で施術をするという技で、施術者が持つ、大きな杖がシンボルとなっている。昔の写真やyoutubeのビデオを見ると、足をあぶるときに大きな火や煙が上がっていたりしてすごい迫力だ。アジアの神秘というか、フィリピンの心霊療法みたいなエキゾチックな、魔法のような、原始人のような、とにかくこの世の物とは思えないような超絶なテクニックだと思った。
それが、ナショナルハーブエキスポで受けられるというので、初日の朝一番に一人目のお客さんとなって実際に受けてみた。足を火であぶっているわけではなく、炭火で熱した鉄板を軽く踏んで、足の裏につけたオイルを温め、その足で踏むようにして凝った部分を解していく。実際に受けてみると、見た目の強烈なイメージと違って、ハーブボールで患部を温めるのと、足を使って踏む施術と、オイルマッサージを一度に行っているということであり、それほど違和感はなかった。足を鉄板で熱する理由だが、確かに冷たい素足よりは熱い足の方が解れる感じはあるしハーブボールの効果がプラスされている。杖でバランスを取って足で乗ることにより施術者は自分の体を酷使することなく、楽に強い圧を相手に入れることができるし、オイルで滑らせることによりオイルマッサージのようにもなる。ヤムカーンのメリットとして、タイマッサージ、オイルマッサージ、ハーブボールを同時にやることにより時間の短縮が図れ、なおかつ施術者への体の負担も少ないということが言える。
ただし、やはり足は熱いと思う。オイルの膜と、足の裏の皮の厚みと足裏発汗で鉄板を手で触るほどは熱くはないと思うが、仏教の修行の火渡りの儀式のように、精神的な何かが必要だと思う。驚くべきことに、ヤムカーンを習うことができるスクールもあるらしいが、実際に習得して仕事にできた外国人はたぶんいないらしい。
足の裏につけたオイルが火鉢の近くで飛び散るのでそれが炭火に着火し、炎や煙が立ち上る。パフォーマンスとしての意味も大きいかと思う。私にやってくれた施術師は写真の人ではなくもう一人の人だったのだが、その先生が施術する際、足を首や肩に持ってくるときに熱くなったオイルが顔にも飛び散るので、熱くてかなわなかった。顔に降り注がないよう、もう少し丁寧にやってもらいたいものである。