人間の体は複雑である。人類の歴史において今日まで多くの人が人体の仕組みの解明に取り組んできたが、わかればわかるほど、わからないことが増える。見当もつかないものの代表が脳の思考のしくみ。どのように知識が蓄えられ、そして使われるのかわかったようでわからない。わからないのは脳内だけではない。脳がどのように筋肉を制御し、肩こりや腰痛がなぜ発生し、鍼灸や指圧がどのようなメカニズムで効果を生み出すのかも、完全にはわかっていない。全くわかっていないわけではない。立証されている仮説もある。難しい理由は、ひとつの仮説で説明できないことである。多くの仮説が正しく、しかも、複合的に関わっている。例えば、鍼を打つと、トリガーポイントが消失するという仮説がある。また、鍼を打つと、脳内モルヒネが出て鎮痛効果があるのだという仮説もある。そして、脳内モルヒネが出ることによりトリガーポイントが消失するという仮説もあれば、筋肉を制御する神経が鍼の刺激により正常化して筋肉を弛緩させるという仮説もある。どれも正しいようだが、定量的なことまではわからない。測定が極めて難しいのだ。次回以降に、このような仮説を整理して、マッサージの意味について考察を進めていこうと思う。