廣重耕司さんが2022年2月16日に亡くなっていた、というのをWEBで知った。廣重さん元気にしてるかなあ、とちょくちょく検索していたのだが、この数年、Qi flow projectの方の更新も止まっていてどうしてるのかなあと思っていた。今年が三回忌だったとのことで、今年に入ってからその情報を上げている方がいらして、そのおかげで初めてその事実を知ることとなった。
大変ショックだ。廣重耕司さんは、タイマッサージ業界では有名な方で、チェンマイで有名だったピシェット師の一番弟子として、その教えを忠実に日本で活動されており、タイマッサージに人生を捧げた、日本のタイマッサージマスターの一人であった。私も何度かお会いし、施術していただいたり、ピシェット式を教えていただいたりした。それが2009年のことである。2023年にピシェット師が亡くなったのを知ったときもショックだったが、一番弟子が自分より先に亡くなったことを知ったピシェット師は本当に残念だったと思う。ある意味、廣重さんがピシェット師を連れて行ったような気もする。
お二人に共通して言えることは、いつも「そんなやり方で施術を続けていたら必ず体を壊す。正しい体の使い方を一から学びなさい」という考え方と、ヘビースモーカーだったということだ。体を内側から破壊する煙草(特にタールを出す紙煙草)は絶対に吸うべきではないと私は思っているのでそこは、どうしても賛同できない部分ではあった。そのことを二人に言うと、「したいことを我慢する方が余程体に悪い。君たちが都会の空気を吸っている方がずっと体に悪いよ」と笑い飛ばすのが常だった。しかし二人とも早死にしたことを考えると煙草を吸わない、運動をする、飲食に気を付ける、定期的な健康診断、という現代社会のベーシックな健康管理の方が正しいことは自明だろう。だが、彼らの生き様を見ると、「健康体のままコロリと早死にする」を目指していたようにも思える。体を壊して要介護な感じで長生きするより、自分たちが信じる仏の世界に行ってしまった方が幸せだったのか。仏教的な考えだと、この世は苦悩で、仏にお仕えすれば死後天国に行ける。人は役割を持って生まれてきて、その役割を果たしたら苦悩から解放するという意味で、次の世に移動する。そう考えると二人は、この世で正しいタイマッサージへの取り組み方をタイで、日本で伝えるという使命を果たしたからこの世を卒業したのかもしれない。あるいは、施術を通して患者と一体化し、患者の苦しみをすべて自分の体で中和して、患者を救う、ということを続けてきたために自分の体に負のエネルギーが蓄積していったのかもしれない。

しかし、タイマッサージの師匠は本当に簡単に亡くなってしまう。私の師匠のピシット先生も、レックチャイア先生も、ママニット先生も、ピシェット師も、突然亡くなってしまった。日本人のマスターはさすがに皆さん元気なはずだが、廣重さんがおそらく60歳に届かない年齢で亡くなったというのは本当に残念だし、何だか、身内というか、戦友というか、ライバルというか、大切な人を失ったことは確かで、生前にもう一度会いたかった、としみじみ思っている