タイのマッサージスクールに行くと必ず目にするシワカ・コモラパの肖像画。マッサージの創始者とされる釈迦の主治医である。タイマッサージの起源は2500年前のシワカ・コモラパであると信じられている。
「タイ・マッサージの民族誌―「タイ式医療」生成過程における身体と実践」という本がある。
この本によると、タイマッサージの起源は、実はそれほど古いものではない。
2004年2月8日放送のTBS「世界ウルルン滞在記で「タイマッサージの総本山、アユタヤ」と紹介されたことに対して「ワットポーが総本山じゃないの?」と言う批判をよく聞いたが、実はアユタヤはタイマッサージの歴史において非常に重要で、アユタヤに伝わったマッサージがタイマッサージのルーツというのが学術的な見方である。もちろん、現在のアユタヤがタイマッサージの中心というわけではない。
2500年の歴史は大げさだが、マッサージが各地で脈々と伝えられてきたのは事実である。医療と言えば薬草を飲むかマッサージをするくらいしかない時代が長く続いていたのだ。それら土着的な伝統医療がアユタヤ王朝で体系化された。それがタイマッサージのルーツである。しかしながら、現在行われているタイマッサージはアユタヤのマッサージそのものではない。アユタヤから更に時代が下り、ワットポーに残された壁画が指圧ポイントの基準となっている。
ストレッチは全く別の起源を持つ。王室や寺院で伝えられてきたマッサージは主に指圧、手掌圧である。ストレッチは「隠者の体操」すなわちルーシーダットンが起源であり、それは地方の土着的な修行僧やマッサージ師によって仏教と大きくかかわりながら発展してきたものである。身体の色々な場所を密着させたり、足で踏みながら伸ばすのが特徴になっている。
現在、タイで行われているタイマッサージは、これらの複数の起源を持つマッサージを複合、編集したものだ。例えば、ワットポーのマッサージスクールで教えているBASICマッサージは、1991年にワットポー協会長が18人の講師と共に古くから伝わるマッサージの理論・手技の中から、10のセン、簡便な技法、ストレッチは安全で効果があるものだけを残し、それ以外は削除したものである。あまり知られていないことだが、ワットポーのタイマッサージはほんの17年前に開発されたものなのである。
続く
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