NHKスペシャル「病の起源」の最終回を見た。

今回のテーマは花粉症。実は私も花粉症暦25年で、花粉症の季節は薬のお世話になる。私の記憶だと、花粉症という言葉自体、30年前にはほとんど聞いたことがなかった。なぜ昭和の終わりごろから爆発的に増えたのか、そしてなぜ花粉を大量に浴びているはずの杉が多い地方の人よりも都会に人に患者が多いのかは長らく謎だった。

当時から、都市の車の排気ガスがいけないとか、食品添加物の摂取が花粉症体質にするとか、都会の現代人が花粉症になる原因として色々なことが言われてきた。

私もいろいろ考えた結果、都会人は鼻毛を切って鼻の穴を清潔にしているから花粉に対して無防備になっているのではないかとか、化学調味料がいけないのではないかといった仮説を提唱した(が、誰も信じなかったのは言うまでもない)。

その長年の謎の答えが、遂にこの番組で明かされた。それは全く意外なことだった。

なんと、家畜の糞が撒き散らす成分を1歳以下の年齢で日常的に吸い込んでいるとアレルギー体質にならないのだと言う。言われてみれば、免疫機構は幼少時に浴びる有害物質により形成されるのだから素直に納得できるのだが、まさか牛小屋によく出入りしていたかどうかが決定的だ等と言う事は想像の範囲外だ。これを解明したイギリスの学者には心から敬意を払う。

思えば、インドで日本人がインド人と同じようにガンジス川の水を飲んだらたちどころに下痢をしたり寄生虫に蝕まれたりする。インド人は生まれたときからそういう細菌の洗礼を受け、多くは死に、生き残ったものには強力な免疫が備わる。

現代人は近代医療や清潔な環境によって幼少時の死亡率は劇的に減ったが、免疫力を失い、薬がなくては生きられない種族になってしまった。

親、そして本人の立場では、死亡率が低い方がいいに決まっているが、種として見たときに、1000年後にも元気に生き残っているのはどちらなのだろうか? 薬や医療設備がなければ生きていけない種族なら、ちょっとした天災や戦争で簡単に滅びてしまうような気がする。

我々にできることは、牛小屋に乳児を毎週連れて行くことだろうか。東京にも、「乳児のための牛小屋」という設備が出現するかもしれない。