店が繁盛するかどうかの分かれ道はどこにあるのだろうか?
最近テレビでもよく取り上げられる隠れ家飲食店のような店はどこにあるのか知らない人には全くわからない、それでも繁盛している。店というのは駅から近く、そして目立つということが物凄く重要なので、そうでないのに繁盛するのはすごいことだ。もともと別の場所でやっていて常連客を呼び込めるとか、シェフのネームバリューや料理の圧倒的なうまさとか何か、コアになる要素があるから客数が雪だるま式に膨らむのだと思う。そうなってしまえば、家賃は安いし、広告や看板費用はいらない分、利益も経営も安定することは想像に難くない。

「ばん」という祐天寺屈指の繁盛店があるが、ここも場所はそれほどよくない。しかし、中目黒時代からの常連客や、居酒屋としてこれ以上ないほどの完璧な店づくり、そしてレモンサワー発祥の店という伝説がこの店の成功を支えている。

恵比寿に「香月」というラーメン店があった。私も何回も行ったことがある超有名店で、とてもうまかったし、恵比寿ラーメンというのは香月のことかと勘違いするくらい繁盛していた。ところが、その場所を離れ、三軒茶屋に移転して一年ほどで結局閉店してしまった。三軒茶屋店は駅からは近いものの、比較的人通りの少ない建物の二階だったので場所のハンディもあっただろう。ラーメン店が2階というのは致命的なことかもしれない。しかし、あの香月である。ネットの噂によると、恵比寿の元の店は家賃が値上げになったことでビルオーナーともめて、それで三軒茶屋移転になったということらしいが、値上げに応じて元の場所でやっていれば今でも繁盛していたことだろう。もったいないことをしたものだ。同じ場所で続けることの大事さ、そして、物件立地の力、時代の流行、考えさせられることは多い。

私もヨガスタジオをたくさん持つようになり、立地条件の難しさは痛感している。もちろん、駅の乗降者数や駅周辺の属性別人口、他社動向のようなことは一通り考慮して、慎重に出店しているが、メンバー数は店によって大きく異なる。店が増えるに従い、どのような要素が影響するか、何を目安にメンバー数が予測できるかは徐々にわかってくるのだが、完全にはわからない。住んでいる人のタイプも街によって異なるし、結局、やってみなければわからない。コンビニやファーストフードチェーンがどんどん出店し、不採算店はどんどん閉鎖するという手法は、やってみなければわからないというのを行動で示している。チェーン店が繁盛するかどうかは確率的に考えることで、いくつかはうまくいかないというのは納得づくでやるものなのだろう。

うまくいくか、いかないか、心配していても先に進まないので、悩むことはやめることにした。だめならだめでいい。テニスの試合でもポイントを一ポイントも失わずに勝つことなどない。失ったポイントより得たポイントが多ければ勝つわけで、失点しても別にかまわないという、正に失敗を恐れない無神経さ(←勇気ではない。勇気や無謀という言葉は恐怖があるから成立する概念だが、恐怖すら感じない無神経さがスポーツ選手や経営者にとって最強)で突き進むしかないのだ。

そんな気持ちで来月、下北沢スタジオをオープンする。うまくいくかどうかは運次第だ。私に運があればうまくいくし、なければ・・・、いや、なければということは考えず、自分の強運を信じることにしよう。
私は下北沢が大好きなので、下北沢に店を持てるというだけで故郷に錦を飾るような嬉しい気持ちになる。一方で、何だか、終わりのないギャンブルをずっと続けているような心境でもある

下北沢スタジオ(まだ何もできていません:-()