タイマッサージの指圧は、垂直に、ゆっくり、吐く息に合わせて、体重を乗せて、指の腹の広い面積で、押す が基本である。
しかし、実はそれだけではない。どのような圧力曲線を描くかが極めて重要だ。下図を見てほしい。ブルーの曲線は上手な人の圧力曲線である。指を皮膚の表面に置いてから徐々に圧力を高めていき圧力の高まりが加速して、一定の圧力に達すると数秒間キープし、そして緩める。この押し方だと、入りがソフトなので相手が警戒せず、素直に圧力を受け止めてくれる。そして、結構強いところまで押しても力が抜けているので痛みを感じにくい。
赤の曲線は下手な人の圧力曲線である。指を突き刺すように急激に圧力を上げる。指を置いて、どんともたれる感じで押すとこうなる。この場合、相手は指圧に恐怖を感じ、警戒し、力を入れて筋肉を硬直させてしまう。指を拒絶した状態になる。そうなると、指圧は単に痛いだけとなる。
心地いい指圧は長年の経験が必要とか、熟練が必要とか、どうやればいいのか言葉では説明できないとか言われるので、初心者にとっては神秘すら感じる世界なのだが、圧力曲線で説明できるような気がする。寿司職人もうまい寿司の握り方は簡単には若手に教えないが、近年はどう握ればいいか科学的に解明されていて経験の浅い若手でも理論通りにやればそこそこできるのである。
この圧力曲線を描くにはちょっとしたコツがある。体重を乗せるときの腰の持ち上げ方と息を吐くタイミングである。正しい姿勢、正しい呼吸で、この二つを繊細に行えばそれほど意識しなくてもこういういい圧力曲線になるように思う。そして、もう一つ決定的なのは、相手に対して優しい心遣いができる人かどうかということだ。下手な人はまず確実に無神経で、自己中心的で、空気を読めないようなタイプの人である。技術や理論でここまで語ってきて、最後にひっくり返すようで恐縮だが、やはり心のあり方がいい指圧を生み出すような気がする
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