タイに行くときはタイ料理が楽しみだ。タイに着いたらあれも食べよう、これも食べようと妄想は膨らむ。うまそうなタイ料理は市場やフードコートにある。ちゃんとしたお店でメニューを見て頼んでもいいのだが、それだとどんな料理が出てくるのかわからない。市場やフードコートなら写真も豊富だし、周囲を見渡すとみんなが食べているものを確認できるので、視覚的に、そして嗅覚的に自分のイメージ通りのものが注文できる、しかも安い。唯一の欠点は、ビールを飲んでいる人がほとんどいないこと、一人だけ飲んでいるのは何となく抵抗があるものだ。そんなときは汁ものだろうが麺だろうがテイクアウエイすればいい。ホテルに持ち帰り、ビールと一緒にゆっくり食べる。だからタイに行くときは、軽いプラスチックの食器と洗剤スポンジを持参すると便利だ。

市場で買ってきたソムタム(あまりうまいと思わないのだが・・)、カノムクロック、センレックナーム、惣菜飯を並べてご機嫌に食べた。うまい! と思うのは最初の1日、2日くらいだ。一週間くらいすると市場のにおいだけで食欲がなくなってくる。お腹も調子が悪い。あっさりしたものが食べたくなる。屋台の麺類はあっさりしているようで実は油が結構ぎとぎとだ。富士とか大戸屋とかの日本料理屋でもいいのだが、タイ料理のカテゴリーの中で食べられそうなものを探していると、不思議な料理を見つけた。卵焼きご飯とスープのセットだ。だいたいどのフードコートにもあると思う。卵焼きご飯というのは、ご飯の上に平べったい卵焼きが乗っかったもので、たれがかかっていない天津飯のようなものだ。スープは定番は白菜と豆腐と豚のつくね(肉団子)を澄まし汁で煮たものだがいくつか種類があり選べる。野菜スープのようで食べやすい。この料理があっさりしてて実にうまい。毎日でも食べられそうだが、よく考えると、ワンタンスープに白菜と豆腐を入れればできるし卵焼きもご飯も普通なので自分の家でも同じようなものは簡単に再現できる。わざわざタイまで来て食うようなものではない。しかし、タイに一週間もいるとタイで一番うまい食べ物になるから不思議だ。この料理が昔からあったのか、最近の定番なのかは謎だが、バンコクならどこにでもあるようだ。

カオマンガイという料理がある。タイ人だけでなく日本人にも大人気で、タイ飯の中でももっとも日本人受けする食べ物であり、日本でチェーン店を開いたら必ずヒットする、と私はずっと思ってきた。数年前に、渋谷に実際にお店ができたのだが、果たしてヒットしているのだろうか? カオマンガイも汁なし天津飯と同じで、タイ料理の濃い味と匂いに参った段階で初めてうまいと思える食べ物なのではないだろうか。消去法的に選ばれるだけの食べ物ではないだろうか。バンコクでシンガポールのやつとか、ピンクのカオマンガイとかいろいろ食べてみたが、確かに食べやすいが、日本でいえば鶏釜飯と大して変わらないし、名店の鶏釜飯の方がうまいと思う。要はタイにいて、タイの中でもっともあっさりしていてご飯がしっとりしていて、味覚も日本人に合うのがカオマンガイなのではないかと思うようになった。ピンクのカオマンガイはなぜか大盛がなくなり、普通40バーツはとても小さかった。もう一つ食べるのも芸がないので、近くのモールの8番ラーメンで冷やし中華と(日本風)炒飯を食べた。とてもうまかった。さっき食べたカオマンガイよりうまかった。ついでに言うと、タイで食べるSUBWAYやマクドナルドはとてもうまい。日本ではほぼ食べないが、タイだからそういうものを食べたくなる。

私の理論が正しければ、カオマンガイは日本では成功しないと思う。渋谷の店はどうなるだろうか