トリガーポイントの除去には色々な方法がある。
トリガーポイント理論の提唱者であるサイモンとトラベルは、指圧や鍼による治療にネガティブであった。彼らが推奨する治療法は、注射器で薬剤(あるいは生理食塩水)をトリガーポイントに注入するというものだ。トリガーポイントを溶かしてリンパに吸収させてしまうという発想である。
しかし、後の研究者は鍼や指圧でもトリガーポイントは除去できると主張している。それらの治療法に共通するのは痛みを与えるということだ。突き刺す刺激、熱、圧力等々により、痛みを生み出してそれを脳に伝える。
痛みが脳に伝わると何が起こるか。ここからが正確にはよくわからない。まず、脳は痛みを和らげようと鎮痛物質を脳内に発生させる。この脳内モルヒネによる鎮痛効果こそが鍼治療の本質だと主張する研究者もいる。だから、鍼治療は一時的に痛みを和らげるがトリガーポイント自体を除去しているわけではないので痛みは再発するのだと言う。
そうではなく、痛みに対する脳からのフィードバックにより、筋肉を制御する神経と脳の情報通信が正常化して筋肉の緊張状態が解かれて筋肉が弛緩し、それと共にトリガーポイントがリンパに吸収されて消失するのだという説もある。筋肉が弛緩するからトリガーポイントが消失するのか、トリガーポイントが消失したから筋肉が弛緩するのか、順番はよくわからない。恐らくこれらは循環の関係にあり消失が弛緩を生み、弛緩が消失を促すという好循環が生まれるものと考えられる。
指圧、手掌圧は物理的にトリガーポイントを消失させる。押すことで適度な痛みを与えるだけでなく、押しつぶす力で無理やりリンパに吸収させるのである。しかも、鍼灸や注射のように皮膚を傷つけない。「もっとも安全で効果的な療法が指圧・マッサージである」というのが手技療法セラピストの誇りだ。
トリガーポイントの発生、そしてそれが何を引き起こすか、治療によりトリガーポイントが除去される(そもそも本当に除去されているのか?)メカニズムはどうなっているかは上記のような仮説は色々あるが未だ決定的なものはない。確定していることは、
1)トリガーポイントは存在する
2)トリガーポイントが別の場所に痛みがあると錯覚させる
3)注射や鍼灸、指圧マッサージにより痛みは軽減される
メカニズムは何にせよ、鍼灸マッサージのような東洋医術により体の状態がよくなることは確かのようだ。
続く