オンタイマッサージスクール

Ong thai massage school

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今、最も勢いのあるスクールだと思う。
日本人に人気の、タイにあるタイマッサージスクールのトレンドは年々変化する。古くはプッサパー、ITM、この10年くらいはCCA、CLS。オンタイマッサージスクールは比較的新しいスクールだが、人気急上昇中で、行った人の評判もよい。最近「オンタイマッサージスクールで習いました、とてもよかったです」ということを聞くことがとても多くなってきたので私も気になり、行ってみることにした。

コースメニューを見ると、非常に多種多彩である。目的に応じてコースが細かく分かれているので選択しやすい。いまどき5日間のベーシックが3500バーツというのも安い。ストレッチコースが独立していて、しかもレベル1、レベル2とたくさんあるのも珍しく、どんなストレッチをしているのか興味がわいたのでこのコースを受けることにした。それぞれ2日間2500バーツで、合計5000バーツ。安い。雨季のオフシーズンだったからか人数も少なく、どのコースも先生一人当たり1名~3名くらいを教えていて、この人数でこの料金は本当に良心的だと思った。レッスン内容もよく練られていて、たくさんいる先生の教育も行き届いていて、とても快適に、しっかりした技術を細かく教えてもらった。先生が直接施術してくれて、生徒も先生に直接施術して確認できて、とても満足度は高い。教室はエアコン完備で全体的にとても清潔、お茶や水、お菓子類も無料で提供される。私は近くのゲストハウスに泊まったが、生徒用の宿泊施設も安価に用意されておりスクールとして完全だ。

教えているテクニックは、オーソドックスなチェンマイのやり方が多いが、ワットポーなどのバンコク系のテクニックも複合されている。基礎コースとしてはベーシック、プロフェッショナルとあるが、この二つ10日間で基礎コースと考えていい。内容はチェンマイ式、バンコク式がバランスよくミックスされたオン先生オリジナルシーケンスである。エルボーテクニックコースも、多彩な手技がコレクションされていて、エルボー集大成的なボリュームがある。各コースがオン先生の豊富な知識により、非常にマニアックに専門的に手技が集められ構成されている印象だ。そのため、他スクール卒業生や現役セラピストであっても、各コースの内容は魅力的だし受ける価値がある。

オンタイマッサージスクールが成功している理由は、これらのコースをオン先生一人で作り上げてしまったことだけでなく、スクール経営のすべてをオン先生が一人で行っていることにある。タイに数多くあるスクールを3つのタイプに分けるとすれば、

1)先生が一人でやっている寺子屋的スクール
2)経営者が先生を雇用して運営しているスクール
3)先生自身が経営者として先生を雇用して運営しているスクール

があるが、ほとんどは1か2だ。3のタイプは最も強力だが数は少なく外国人向けとして大規模化に成功したのはオールドメディソンホスピタル、ITMくらいしか思いつかない。先生自身が経営を行う場合、タイマッサージをよくわかっている人が直接、生徒がしっかり習得できるように心を配り現場を作り上げていくので素晴らしいスクールになるのだが、やはり経営という話になるので経営者としての能力の高さがないとなかなかできるものではない。オンスクールは最近珍しい3のタイプのスクールとなる。

オン先生ともいろいろと話をしたが、非常に頭がよく、チャーミングで人柄もいい。細かいことに気が付き、何でもよく考え、すぐに実行する。そしてエネルギーがものすごく、いつも元気で笑顔で、ポジティブな空気を周囲に発散しておりそれがオンスクールの雰囲気を決めている。タイマッサージの技術知識が深く、性格がよく、ビジネスセンスが抜群、まあ成功しないわけがないだろう。

オン先生が常に現場を見ているので、先生たち一人ひとりが日本語、英語をよく勉強して、モティベーションも高い。人気の高まりともに生徒数が増えてもオン先生なら、学校の規模を拡大する中で先生の数を増やし、生徒の満足度を犠牲にすることなくうまくやっていくことと思う。今後ますます人気が爆発することは間違いなく、チェンマイを目指す日本人セラピストの受け皿として隆盛を極めるだろうことを確信したしだいである。

強揉み、好転反応?

chepネットでマッサージをやっている人のWEBサイトを見ていると、「うちは強揉みはいたしません。強揉みは筋肉を傷めます」といった記述がちょくちょくある。タイマッサージをしているある人のブログではこんな記述もあった。「お客さんから強揉みを求められることがあるが極力断っている。強揉みをすると筋繊維を傷めるので翌日以降に揉み返しが発生してコリや痛みがより悪化するから。しかし先日、あるお客様から揉み返しがあってもいいから強くやってくれと言われてそうした。案の定、翌日熱を持ったような強い痛みがあり辛かったが、数日するとその痛みもすっかり取れ、いつになく肩が軽くなったらしい。その話を聞き、それは好転反応と言うものかと思った。」

好転反応、そんなものがあるのだろうか? そういう話は聞いたことがあるが、私が習ってきたタイマッサージのスクールにはない概念だ。タイマッサージの世界には基本的に好転反応もないし、揉み返しもない。なぜないかというと、タイマッサージではそもそも「揉む」というテクニックが少ない。揉んだとしても掌全体を使って包み込むように優しく掴むか、指先でセンを柔らかく弾くかくらいで、痛みを発生させるような揉み方はしない。揉むと言うより、圧迫する、弾く、という表現の方が近い。では強くやる時というのはどういう時かと言うと、トリガーポイントをピンポイントで強く押すか、ストレッチを強烈に行うか、の二種類しかない。これらは確かに強烈に痛いが、筋繊維を傷めずに強力に筋肉を解すテクニックである。だから揉み返しも副作用もない。強く痛く行うかどうかの判断は、純粋にお客さんの好みによって決まることとなる。痛いのが好きな人、痛くても解してほしい人には強くやるだけだし、その際に揉み返しとか筋肉を傷めるからという要素はやるかどうかの判断基準にはならない。もちろん肋骨等の骨を折らないように、皮膚に青あざを作らないように、狙う筋肉・トリガーポイントだけにパワーが集中するように気を付けないといけないし、糖尿病のように痛みの感覚が鈍い人にはやりすぎないように注意しなければならない。

では好転反応とは、理論的にどう説明できるのだろうか? 上記のブログの体験談はどう説明できるのだろうか? 私はこう考える。強揉みをした結果、トリガーポイントは解れたが同時にトリガーポイント周囲の筋繊維を破壊してしまった。だから翌日に炎症からくる痛みが発生した。しかし炎症が収まるとトリガーポイントは既に除去されていたので状態は改善されていた。こういうことではないだろうか。つまり、悪いところがよくなる過程でその場所がいったん痛みを発生しているわけではなく、悪い場所の近くの、健康な筋肉と皮膚が一時的に炎症を起こしているだけなのではないか。そう考えると「好転反応」は悪い場所がよくなることには関係がなく、発生しない方がいい。施術過程で筋繊維の破壊や炎症を避けることができれば揉み返しや好転反応を起こすことなく肩は軽くなる。それがタイマッサージの名人芸だと思う。

ただタイマッサージの世界にも好転反応らしきものはある。ジャンルとして本当にタイマッサージなのかどうかわからないが、ボーンナイフというソムキャット先生が得意とするテクニックだ。動物の骨で作ったナイフで患部、例えば背中を全体的に叩きまくる。終わると背中は全体的に真っ赤に腫れ上がる。施術中も痛いし、数日間椅子の背もたれに背中をつけることができないほど痛い。しかし、何日か経つと赤い腫れは嘘のように消えてなくなり背中の凝りも取れる、というまさに荒療治である。原理は幹部の血流を活性化させ、本人の体の自然治癒力を引き出してコリの原因となる老廃物質や悪い血液を一気に流し去ってしまう、ということのようだが、医学的に本当にそうなのかどうか、そしてそもそも、その療法で体の状態がよくなるのかはよくわからない。リオオリンピックの水泳フェルプス選手の丸いあざで有名になったカッピング(吸玉療法)もボーンナイフ療法と同じようなものだと考えられるが、これについても否定的な記事はある。

リオ五輪で流行の「吸玉療法」 丸いあざに潜む危険性

いずれにしても、翌日に体が痛くなるような療法は日本のタイマッサージのリラクゼーションの範囲を逸脱しているし、危険やクレームの原因になるので、一般のセラピストは知識に留めておいた方がいいと思う。

ナポリタン中毒

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今はまっている食べ物がある。冷凍食品のナポリタンスパゲッティだ。パスタについてはアルデンテ信仰というのがあって、ディ・チェコの乾麺をアルデンテで茹でて、パスタソースをかける、あるいは和えて作るものだと思っていた。さすがにパスタソースを作るのは大変なのでレトルト食品を使う。
ある日、冷凍食品のパスタが特売だったので食べてみた。すると、侮れないうまさである。生めんシリーズの麺はもっちりとしていて、ある意味乾麺よりうまい。カルボナーラとかペペロンチーニ、タラコのようなジャンルだとアルデンテということが大事なので乾麺から作るほうがうまいだろう。しかしナポリタンというのは芯が抜けているくらいのほうがナポリタンらしかったりする。なので、冷凍食品でも十分うまい。粉チーズをたくさんかけると中毒になるくらいうまい。しかも大盛360gで175円という安さである。レトルトのパスタソースだけでも200円くらいするのに麺も調理もついていてこの値段と言うのは破壊的商品と言っていい。冷凍讃岐うどん出現よりも業界的なインパクトは大きいかもしれない。

タイマッサージと全く関係ない話だったが、テクノロジーの進歩はすごいこと、破壊的なテクノロジーが業界地図を一変させる一例と考えることもできる。現在のマッサージチェアは人間がやる上手なマッサージと比べることもできないほどレベルが低いものだが、将来はどうなるかわからない。今話題の、人工知能で熟練の技を学び、カスタマーの好みを学び、深い医学的な知識も加え、指や手よりもすごいパーツを開発できれば人間のマッサージは要らなくなるかもしれない。いや、確実にそういう日は来るだろう。仕事がら、まだそういう時代ではない、今の時代でよかったと思う。

8番ラーメン

logo仕事がひと段落して時間ができるとどこかに出かけてみたいと思う。今となってはタイに行く用事もあまりないのだが、タイに行きたいなあと思った時に頭に浮かぶのは8番ラーメン

8番ラーメンは北陸地方のラーメンチェーンである。なぜわざわざタイでチェーン店のラーメン? と、行ったことのない人は思うと思う。私もずっとそう思っていた。お店の存在はたぶん20年以上前から知っている。ショッピングモールのほとんどに入っており、看板やロゴがあまりにもチェーン店的で商品に特徴がなく、内装もファミレスみたい。タイで敢えて行くこともないと考えていた。うまそうなラーメン屋の佇まいというのはああいう感じではない。店主のこだわりを感じるような大きな鍋でスープを作っていて、純連の味噌ラーメンのような見るからに家では作れなさそうな特徴あるラーメンがうまいラーメンだという先入観があった。

sonota_chahanしまった、ラーメンの話ではなかった。私が8番ラーメンで食べるのは炒飯だった。前述したような理由で、見るからに凡庸なラーメンしか出てこなさそうな8番ラーメンだが、タイに何度も行ったり長くいたりするとタイ料理の味付けがきつくなり、和食に走るのだが、昨今の円安やタイの物価高でタイの和食は日本と同じくらい高い。大戸屋にいたっては日本より高い。そんな中、8番ラーメンは日本食としては非常に安い。タイの屋台で食べる炒飯(カオパッド)はナンプラー味でちょっとべとっとしている。そうではない中華料理屋の味付けの炒飯を期待して8番ラーメンで食べてみたのだが、それが実にうまい。特にすごい材料が入っているわけではないが、炒飯に期待する普通の味が最高の形で実現されている。グリーンピースと紅ショウガが入っているのもいい。王将や日高屋、リンガーハット、新福菜館等々、日本の中華料理店で出される炒飯よりも8番ラーメンの炒飯の方がレベルが高いのではないか、と思うくらい病みつきになる味だ。化学調味料が入っているのかもしれないが、うまいから許す。というくらうまい。
sonota_karaage鶏の唐揚げもうまい。餃子はまあまあうまい。ラーメンはスーパーで買って家で作るくらいのレベル。冷やし中華も普通だが、自分で作る手間を考えるとあの値段で食べられるのは嬉しい。つまり、ラーメン屋で出る普通のメニューが、普通というコンセプト内で最高レベルに仕上げられていると言っていい。

タイに行ってタイ料理に飽きたらぜひ行ってみてほしい。定番の商品を期待通りちゃんと提供することの偉大さを感じることと思う。

ナショナル ハーブ エキスポ – National Herb Expo

DSCN1194ナショナル・ハーブ・エキスポ(National Herb Expo)というイベントがある。毎年、9月の第一週の水曜から日曜の5日間に開催されているが、8月末がスタート日になる年もある。今年は2016年8月31日~9月4日の5日間に決まっている。場所はバンコクのインパクトアリーナという大きな国際展示場で、正確に言うとバンコクのちょっと北のノンタブリという地区になる。観光客が行くにはタクシーを使うことになると思うが、そんなに遠くないので、200~300バーツくらいあれば行けるのではないかと思う。インパクトは、コンサートホールや複数の展示場を備えた広大なエリアだ。たぶん東京ビッグサイトよりも大きい。行ってからどこでやっているのか迷う可能性が高いのでどのhallでやっているか事前に番号を確認しておくのがベターだ。2016はHall6-8らしい。こちらのサイトを参照のこと → International Herb Expo 2016
熱帯のいろいろなハーブの展示会だが、ハーブだけでなく、タイの伝統医療やタイマッサージ、タイの伝統的なお菓子や食べ物が展示されており、観光客気分で行っても実に面白い。
展示会としては外国人や輸出促進のためのヘルス&ビューティショーといった展示会もあるが製品が洗練されすぎて面白みに欠ける。ヘルス&ビューティショーがタイ商務省(貿易センター)の主催に対して、ナショナル・ハーブ・エキスポはタイ厚生省が主催しているので、あまり商売っ気がなく、製品の値段も安い。日本人がタイに期待するアジアンな混沌や懐かしい文化が一堂に会しているのがナショナル・ハーブ・エキスポだ。巨大な縁日の出店と言っていいだろう。チェンマイから来た小学生くらいの女の子たちがタイ舞踊や演奏をしていたりいて見物しているだけでも楽しい。
タイマッサージセラピストにとっては、ハーブの実物を実際に見ることができるし、各地から様々なタイプのタイマッサージ師が来て実演施術をしているので勉強になる。ワットポーやチャオプラヤアブハイブーベ、カオコータレプーのようなタイマッサージ、タイ伝統医療の王道を見たり受けたりすることはもちろん、足を火であぶって温めてその足で踏む施術や、今ではすっかり有名になったトークセンを受けることもできる。主催者側としては完全にタイ人向けで、外国人にはむしろ来てほしくないと思っているのかどうなのかわからないが、ネットで情報を検索してもほとんど情報が得られない。次回はいつやるのかもよくわからない。が、超お勧めであることは間違いないので何とか情報を調べて行ってみてほしい。

DSCN1276中には怪しげな施術のデモもある。写真のように蝋の筒を耳の穴に当てて火をつけて耳掃除するというのを見た。当時は起源も原理もわからず、火に向かって上昇気流が発生するのでその風の流れの音がするのはわかるがそんな気流で耳垢が吸い上げられるはずもなく不思議に思っていた。
今日ふと、ネットで検索したら何かわかるかもしれないと思い調べてみたところ、なんと、あのキャンドル耳掃除はインチキだということがわかった。しかも起源は中国かどこかで日本にも輸入されていた時期があったらしい。

「キャンドルタイプの耳ケア用品」で事故多発(発表情報)_国民生活センター:

まあ、そういう胡散臭いのが混じっているところがこの展示会の面白さであり、私がお勧めする理由でもある。


IMPACT Exhibition center
BTSモチット駅から無料シャトルバスあり
-BTSモチット駅の4番出口を出て駐車場の横に乗り場あり
-30分ごとに1回出発
-毎日運行 06:00-22:00

タクシー利用の場合
-バンコク市内から約30分-50分(道路状況による)

シンチャイ治療マッサージ

Sinchai Massage School & Therapy

39_1チェンマイでナンバーワンと言われているもう一人の伝説のマッサージ師です。非常に誠実で優しい人柄で、患者さんだけでなく、チェンマイのマッサージティーチャーからも広く支持されています。ピシェット先生については賛否両論があるのですが、シンチャイ先生については否定的な意見を聞いたことがありません。すべての方から愛され、信頼されている先生です。
先生が盲目と言うこともあり、派手なストレッチ技はなく、大きな筋肉には肘を使い、繊細な筋肉は手を使って細かいセン弾きを繰り返します。伝説のマッサージ師という噂から神秘的な直感やセンスを想像してしまうのですが、実際には超理論派です。解剖学的な知識に基づき、筋肉を丁寧に解していきます。その丁寧さが、本当に丁寧で、先生の人柄が伝わってきて心を打たれます。タイマッサージの心、というのはこういうことかと、名人と言うのはこうだから名人なんだ、といろいろなことを学ばせてもらえます。
テクニック的には、優しい刺激を繰り返し与えることで筋繊維に傷をつけずに解すということを実践しており、有名なシンチャイチョップもとにかく優しくて繊細です。繊細なタッチを学ぶためにもぜひとも行ってほしいスクールです。

しかしながら、数年前に場所が、極めて不便なところに引っ越してしまい、どうやって行くかというのが大きな問題になってしまいました。自転車で行くには遠すぎるので、ソンテウを捕まえて行くことになりますが、ドライバーに住所や地図を見せてもまずわかってもらえないので、携帯電話をシンチャイ先生にかけて、それをドライバーに渡して説明してもらうしかないでしょう。ホームページにはチェンマイ門あたりまで迎えに来てくれるという情報も掲載されていますので、一度電話をして聞いてみてください。

タイマッサージの相性


タイマッサージを始めて間もないころ、タイ・マッサージの民族誌という本を読んだ。
主にチェンマイのオールドメディソンホスピタルに取材してタイマッサージの民族性について考察した本だが、その中でオールドメディソンホスピタルのセラピストに「誰が一番上手ですか?」と聞いた時の答えが印象に残っている。
その答えは「誰が一番とかはない。タイマッサージは相性のものなので、顧客によって好みのセラピストは異なる。だから順位などつけられない」というものだった。

そんなものか、とその時は思った。確かにセラピストによって強かったり、優しかったり、速かったり、独特の癖があったりするし、その施術には人間性や性格が色濃く反映されている。人間関係も相性があるのでタイマッサージもきっとそうなんだろう。私が嫌だと思ったセラピストでも他の方は機嫌よく指名しているという事実もある。

しかし長年が経過し、何度もオールドメディソンホスピタルやその他で施術を受けているうちに、やはりうまい下手はある、と思うようになった。オールドメディソンホスピタルであっても下手な人はいる。もしそれを下手と感じずに気持ちよく受けている人がいるとすれば、その人は味覚音痴か、もっとうまい人がいるのを知らないだけだ。うまい人と言うのは実はあまり相手を選ばない。相手の好みや相手が求めていることを会話や体の状態から感じ取り、チューニングするので誰に対しても素晴らしい施術を行う。だから相性はあまり関係がない。例えば、チェンマイで名高いシンチャイ先生やタノン先生のマッサージを下手だと思う人はよほどのへそ曲がりだろう。
本に書いてあった、「タイマッサージは相性だから」というのは、単に順位付けされたくない、したくない、という言い訳だったに違いない。

ただし、うまい下手でうまいに分類される人の中には治療を意識してトリガーポイントを狙い撃ちするように痛いところばかり強く押す人がいる。それは私好みの施術ではないが、そういう全体的に痛いのが好きな人もいるのかもしれない。それは確かに相性の問題になるのだろうが、痛いのが好きでない人に痛いマッサージをするのはセラピストの自己満足なのでやめた方がいいと思う。

タイマッサージを習うということ

タイマッサージをやるからには上手になりたい、と誰しも思う。

DSC_3389どうすれば上手になれるか、ということについて考えてみたい。簡単に考えると、「タイ政府認定資格」を取得すればばっちりのように思えるが、そんなに甘いものではない。民間のスクールというのは基本的には営利目的でやっているので、講習が30時間と決まっていればその時間で終わり、生徒の修了レベルに関わらず「タイ政府認定資格」は発行される。テストをしてダメ出しをしたり、ちゃんとできるまで講習延長したり、不合格にすることはまずない。お客様である受講生の方が気分よく帰ってくれることが大事だし、できるまで時間延長していたらいつ終わるかわからないし、講師の方の時給を払わなくてはいけなくなる。
その結果何が起こるかというと、卒業した受講生は自分が上手なのか下手なのか、プロとして通用するのかしないのか、よくわからない。いや、そこまで考えればいい方だ。マッサージにうまい、下手があることすら気が付かず、教わった通りにできているのだから自分はばっちりできるようになった、と思い込んでいるケースがほとんどではないだろうか。

タイマッサージは芸術である。と言う人がいる。それほど大げさなものではないと思うが確かにそういうところはある。ピシット先生はタイマッサージは2時間の交響曲である、と言っていた。全体構成、流れのスムーズさ、個々の技の気持ちよさ、そういうものの総合的な結果として、お客さんがどれだけ満足していただけるかの勝負である。

芸術と考えると、「資格」を取れば一人前になれる、わけはないのは自明だ。音楽にしても絵画にしても小説にしても、芸術には資格など存在しない。芸術の世界では資格と言う概念自体が意味を持たない。芸術の価値はそれを鑑賞する人によって決まり、芸術家はこの世に価値あるものを残そうとして技を磨く。

さて、タイマッサージだが、その他の芸術と決定的に違う点が一つある。それは、自分で自分の作品を鑑賞できないことだ。だから、自分の作品が客観的に見てどのくらいいいものなのかということがさっぱりわからない。だからタイマッサージを上手になりたいと思っても、自分のマッサージがそもそもどのくらい下手なのか、どこが下手なのか、そこからわからないという壁がある。

その壁を破るためにはまずは自分が目指す「いいマッサージ」とはどういうものかしっかりイメージできなければならない。美味しいものがわからない人が料理人になれないように、まずはいい悪いの価値判断ができることが大事だが、若い方はまだマッサージの良さ自体を体でわかっていないところがあるので、この壁は実はハードルが高い。まずは、上手と言われる多くの先生、そして一般のサロンなどでいろいろな人から受けて「上手なマッサージ」のイメージを作ること、そして、上手な人は何が上手なのだろうということを考える。下手な人は何がだめなのだろうと考える。そして自分はどっち側の人間だろうと次に考える。そして実際に自分がいいと思うやり方で先生にやってみて、先生にどうだったか聞いてみる。タイマッサージの上達にはその繰り返ししかないと思う。

コランセラピストスクール

コランセラピストスクール

DSCN2265外国人向けとしては珍しく、タイ厚生省スタイルのタイマッサージを教えるスクール。2007年に開校したのでもう10年くらいの歴史があり、先生はずっと同じソムチャイ先生です。ソムチャイ先生はコランセラピストスクールへ移籍する前まではプッサパーの二代目講師として人気があった先生です。さらにその前は、ソムチャイ先生はタイマッサージ復興プロジェクトのメンバーの一人で、ピシット先生の下でタイマッサージ技術の記録編集に携わっていました。ソムチャイ先生にはここ、ピシットタイマッサージスクール日本校でレッスンをしていただいたこともあります。
チェンマイで日本人に人気のスクールのいくつか、いや、ほとんどは、生徒の数が多くてどんどん授業が進んで行き、一人一人がちゃんとセンを気持ちよく押せているか全く確認しません。このため、そういう学校で習ってきた人は日本のサロン現場で全く使い物にならないということは業界で広く知られています。一方、コランではソムチャイ先生がセンの捉え方という最も基本で、最も重要なことを手取り足取り、きめ細かくチェックしてくれるので確かな技術が身につくと思います。これだけ経験豊富な先生がお互いに施術をし合いながら指導してくれるスクールはなかなかありません。

オーナーは江幡(えばた)さんという日本の方で、日本人向けにきめ細かいサービスを提供しており、安心して受講できます。江幡さんには何度もお会いして、飲みに行ったりもしているのですが、なんというか私と感性や経営の考え方が近くてシンパシーが持てます。私は女性向けのヨガスタジオを経営していますが、江幡さんも女性向けのスパを経営していて、ずっと女性と接していると女性化するんですね、インテリアやグッズのチョイスのセンスとか、接客態度とか、清潔感とか繊細さとかが。ですので、女性の方も安心して気持ちよく受講できると思います。

江幡さんが、ソムチャイ先生が伝えたい細かいことまで日本語に通訳してくれるので、英語やタイ語では質問しにくいこともしっかり質問でき、知りたいことを漏れなく、詳しく説明してもらえるのはとても素晴らしいと思いました、江幡さん自身、ソムチャイ先生から長年指導を受けているので、江幡先生とソムチャイ先生、二人の先生が常時いるようなもので、日本人には嬉しいところです。二人とも笑顔が絶えない、とても優しくて気配りの出来る方なので教室はいつもリラックスした楽しい雰囲気に包まれています。

ソムチャイ先生は一つ一つの手技について、なぜこのポジションで、この方向に行うのか、身長差がある場合はどうすればいいのかを、理論的にわかりやすく説明してくれます。しかしただ説明するのではなく、実際に他の方法で行ったときに圧の入り方がどう変わるか体で感じてみたり、実際にやってみてどう思ったか等々、自分で考え、自分でやってみて、感じてみて、その手技が持つ意味を多角的に理解することをレッスンではとても大事にしています。ソムチャイ先生は技術の高さだけでなく、生徒が自分で成長できるようになるための「教え方」ということにこだわっているそうです。

コランセラピストスクールの上級コースでは最後に、1時間のオリジナルプランを考えるという課題もあります。技の形と順番を教えて、修了証を出して、はい終わりという学校が多々ある中、とても良心的なスクールと言っていいでしょう。なぜなら、自分で考えることはその後、セラピストとして活躍する場合に必ず必要になるからです。限られた時間で、体型も状態も異なるクライアントに合わせて何をすべきか、手技の一つ一つの意味をレッスンの段階から深く理解していれば、自力でシーケンスを組み立てることは難しいことではありません。

「サロン現場で即戦力になるセラピストを養成する」、素敵なスクールです。

ワットポー・タイ・トラディショナル・マッサージ・スクール

Watpo Thai Traditional Massage School

「ワットポーにはじまり、ワットポーに終わる。」

とは私が今思いついた格言である。

6_1私が初めてタイマッサージを習ってみようと思って行ってみた学校がワットポーだ。タイマッサージの楽しさ、気持ちよさ、タイの人との交流、いろいろな楽しみがあり、観光ついでにちょっとタイマッサージを習ってみようという方には一番のお勧めスクールと言える。一人の先生が担当するのは4名の受講生までと決まっているので、直接先生にしてもらったり先生にしてみたりできるし、料金も安い。手技も難しいものはなく、分量的にも日数的にも受講しやすい。
ワットポーの境内にある施術所は間違いなくタイでナンバーワンの人気だし、そこのセラピストの平均施術レベルもタイでナンバーワンだと言っていいだろう。そのワットポーの施術が学べるのだから日本のセラピストにも一番人気、かと言えばそうではない。なぜか?

まず、これが致命的な理由だと思うのが手技がシンプルすぎて数が少ないこと。全部をしっかりやっても1時間半くらいにしかならない。ワットポーの施術所のメニューも30分か60分だ。短い時間でしっかり解すというのがバンコク系の特徴なのだが、日本で仕事をする際に2時間のメニューをこなせないのは痛い。それでプロを目指す人は、2~3時間のシーケンスがあるチェンマイの学校に行くことになる。
ワットポーにも上級コースがあるので、それを習えば長時間の組み立てが可能だと思うかもしれない。しかし、ワットポーの上級コースは症状別の指圧ポイントを習うだけで、わかったようなわからないような、施術の流れの中には入れにくい感じだしちょっと地味だ。チェンマイでやっているような派手なストレッチ技をもっとたくさん習いたくなるのも理解できる。

ワットポーで2時間の施術を頼むと、スクールでは教えていない、厚生省スタイルの技が数多く入った施術となる。セラピストによって異なるが、今ではワットポーの施術所でもタイ厚生省スタイルの手技が、スクールで教えている手技以上に使われている。ワットポースクールの施術は腰の上げ下げを伴うしっかりした指圧なので、一日中やっていると流石にきついのだろう。スクール自体も、10年くらい前までは受講生が入りきれないくらいあふれていたが、この数年は閑古鳥が鳴いているくらい人気が凋落した。ここの受講生はもともと日本人は少なく、ほとんどが白人とタイ人だったのだが、なぜ彼らが来なくなったのかは謎だ。場所が不便なところにあるし、テロとか、デモとか、バーツ高とか、授業料値上げとか、他のスクールが頑張ってるとかいろいろな理由があるだろう。しかし、ワットポーの手技体系は何も足せない、何も引けないというくらい完璧に効率的で、タイマッサージのエッセンスがすべて盛り込まれている。また安全性も折り紙付きで、手技がシンプルなだけに、初心者でもちゃんとやればプロのように気持ちのいい施術が実現できる。いろいろなスクールで経験を積んでタイマッサージへの理解が進んだ後、久しぶりにワットポーの施術を見たり受けたりすると、ワットポー式の素晴らしさに改めて感動し、ここに幸せがあったのだ、と気づくことになる。まるで青い鳥のように。